無事にたどり着きましたよ
20分の道程ですし。信号2こしかありませんし。
その2こめで右折して、盛大にクラクション浴びましたけど。私、何をしたんでしょうね?
まあ、無事にたどり着きました。
無事にたどり着いたので、家を見て回ります。
空き家、を借りたわけですが、不動産屋の扱う物件ではないので、いろんなものが残っています。洗濯機や冷蔵庫などの家財は取り払われていますが、台所に調味料が置いてあったり、壁に時刻表やカレンダーが貼ってあったり、押し入れにアルバムが積んであったり。
調味料は捨てました。壁に貼ってある物は触らずにおきます。アルバムは湿気のない場所に立てて置きました。
この家の持ち主は一人暮らしでした。一人で住むには広すぎる家で、ずっと一人暮らしでした。1年前に倒れて、車椅子の生活になりました。古い家にはバリアフリーの配慮がありません。一人暮らしができなくなって、近くの施設に入りました。後を預かったのはご兄弟で、家をリフォームして売却するか、更地にして売却するかを検討中です。
持ち主の人はたまに自分の家を見に来るそうです。中には入れないので、外から眺めて帰るそうです。
私は庭を手入れしようと思います。立ち枯れた紫陽花は「じゃまなら切ってもいいよ」と言われたけど、春になれば葉がつきますよ。持ち主の人が好きな花かもしれません。手入れの仕方はネットで調べます。それか、誰かに聞きます。教えてくれる人がたくさんいそうです。
なんてことを、濡れ縁に座って、お茶を飲みながら考えました。今日は少し暖かいです。
車が届きました
長距離を陸送してくれた夫には、沸かしたてのお湯でカップ麺を振るまいます。
彼はこの後東京に戻ります。家をお借りした方に挨拶して、すぐにとんぼ返り。忙しい人ですね。
父も今日帰るので、一緒に実家まで行ってもらいます。
私の車、明るい中で見るときれいな色ですよ。夜に買ったんで判りませんでした。
忙しい夫から、3分で引き渡し説明を受けます。
車検証はここ。スペアキーがないので作ること。サイドブレーキは足で操作。シフトレバーはワイパーの後ろ。
了解、です。
エンジンを始動します。サイドブレーキは足で操作、シフトレバーはワイパーの後ろ、で、発進。
向かうのはガソリンスタンド。給油のしかたを教わります。
停めるのはここ。給油口はここ。こっちの機械にお金を入れて、おつりはあっちの機械から。
次からは一人で、はい、やります。
ここで、夫が降車。後ろについている父の車に乗り換えます。
スタンドを出て、しばらく2台で併走します。すごく良い天気。雪を被った成層火山がきれいに見えます。やがて交差点に差し掛かって、隣の車は、
ぱん、
軽くクラクションを鳴らして、曲がっていきました。私は直進。ここからは一人です。
橋を渡って、左に折れて、川に沿って走ります。傾き始めた太陽が水面にきらきら映ります。
初めて乗る車で、何度か通った道を、これから住む家へ。
無事にたどり着けるでしょうか?
歴代が通う湯治場
仕事の面接を終えて戻ると、家の様子が変わっていました。
不思議な事がおきていました。
窓にカーテンが吊ってあります。居間に炬燵が作ってあります。炬燵の上にお茶の道具とおにぎりが並んでいます。
台所にふきん。洗面所にタオル。トイレにトイレットペーパー。
玄関にはポストと表札。表札はガムテープとマジックインキのですけど。
この魔法を使った人たちは、疲れて炬燵で寝ています。
疲れますよ、これは。
私はといえば、鼻水が止まりません。鼻水を流しながら面接を受けたので、落ちたときの言い訳は万全です。
お風呂に入たいと思いました。
ボイラーを修理してお湯が出るようになったけど、お風呂は沸かせません。修理代をケチったからです。
お風呂に入りたいと思います。
3人がそれぞれ、近くのお風呂を検索します。WindowsとAndroidとiOSが同じ答えを出しました。
町中のスーパー銭湯まで15分。山間の湯治場まで15分。
「うちの人たちは歴代、この湯治場に通ってきた」年長者の発言で、行き先決定。今から3代で行って歴代度を更新します。
良い景色です。
温泉には地下のマグマを熱源とするもの(火山性温泉)や、高温岩体を熱源とするもの(非火山性温泉)や、よくわからない熱源のものがあります。
古くからある温泉は「山の動物が傷を癒やしているのを猟師が見つけた」的な、自然に湧き出たものがほとんどです。
が、地球の深部は熱いので、地下水には温度勾配というものがあり、だいたい100m掘れば3 ℃上がる勘定で、近くに山があろうがなかろうが、深く掘れば、そこに地下水があれば、温泉が出ます。近年のボーリング技術の進歩と共に、あちこちに温泉が出現しました。
が、私のものさしでは、渓流のそばにあるのが正しい温泉です。理由は、渓流が好きだからです。
ひなびた温泉です。玄関を入ると、「裏の畑で採れた」的な芋や菜っ葉が並べてあります。タオルの貸出無料、信用金庫の名前が入っています。93番地の家を建てた人が通ったここは、火山性の自噴泉。みつけたのは農夫で、傷を癒やしていたのは雉だそうです。
ところで、入湯料300円。に驚いたのは私だけで、同行の地元民によると、「この辺の温泉はそんなもん」だそうです。
これは毎日通ってしまいそうですね。鼻水もぴたり止まりました。
正しい温泉につかって疲れを癒やして、姪は帰って行きました。仕事休んで来ちゃったんですよ、この子。またいらっしゃい、温泉おごるから。
父はもう一晩泊まります。
あれやこれやが決まったので
急いで車を手配します。ネットで中古車を探します。
軽乗用車、オートマ、ナビ搭載、車検あり、が検索条件。
これを予算20万円で。予算は諸経費込の引渡し価格です。
今回は軽トラは見送りました。自分の家が建つまではヤギも飼えません。
車幅・車長の小さい車が扱いやすいので、軽自動車。すぐに迷子になるのでナビ搭載。高速道路は乗りません、etcは要りません。メーカー、車種は問いません。違いが判りません。
ありました。2004年式、軽トールワゴン。走行距離9.9万キロ。オートマ、ワンセグナビ搭載、車検2年を付けて17.5万円。買いました。
軽自動車って車庫証明いらないんですね。手続き簡単。ナンバーは使用地でも東京でも、好きな方を選べます。
保険も加入しました。対人対物賠償無制限。車両保険はつけません。免責額が車両価格を上回る車両保険って、意味ないでしょ?
これを、借りた家まで運びます。夫に運んでもらいます。よろしくね。
私は一足先に現地入り。就職活動に挑みます。
農業を開始しても、当座は収入は見込めません。支出はたくさん見込めます。
私の書いた営農計画書によると、野菜1,000㎡、果樹4,000㎡、を作ることになっています。
1,000㎡はすぐに耕せる土だけど、4,000㎡が問題です。一時転用で公共事業に貸していた土地で、しっかり整地されています。返すときに整地してもらっちゃったんです。雑草が生えなくて助かったけど、雑草も生えない土では果樹も育ちません。トラクターも入らないので、まずは油圧ショベルを入れます。土木工事です。
それから土質を調査して、たぶん土壌改良が必要になって、苗を買って、植えて、マルチを張って、ネットも張ることになるでしょう。たくさんお金がかかります。仕事、探さないとね。
新幹線を降り立つと、駅に車が来ていました。「たまたま近くに用があったので」、落ち合うことにした父の車には、敷布団が3枚積んでありました。それと、鍋やら、食器やら、掃除機やら。
車はもう1台来ています。「じいちゃん一人じゃ心配で」付いてきた姪。の車には、掛け布団が3枚積んでありました。それと、ストーブやら、カーテンやら、食料やら。食料の一部は調理済みです。大量のおにぎり、と煮物。こんな大量のおにぎりをつくった人は、今頃疲れて炬燵で寝ているはずです。今度肩もみに行くからね。
春になったら
「そこに空いてる家があるから使うといいよ」の家。
家賃無料。通作時間15分。
水道が使えます。電気が使えます。ボイラーを修理して、今日からお湯も使えます。
日当たり良好。電波状態良好。閑静。
を、お借りしておきながら、一つだけ文句を言います。
広すぎます。
さっきから、私、うろうろしてますよ。パソコンと、ルーターと、ケーブルを、別の部屋に置いちゃって。鞄と、コートと、携帯も、別の部屋に散らばってます。家が広すぎるからです。
ここで、私の「借りた家ぐらし」適性について書いておきましょう。
私は一戸建に住んだことがありません。
この地方に住んだことがありません。
通作時間90分の実家に住んだことがありません。
ボイラーのパイプが凍結破損する家に住んだことがありません。
私が生まれ育ったのは「はざ木」のある地方です。その地方のあちこちで、ずっと社宅住まいでした。小学校を4つ、中学校を2つ、通いました。高校を出て、大学に入って、私が家を離れた後に、実家が引っ越しをしたんです。
歩いて行ける距離にスーパーマーケットがない地域に、住んだことがありません。
公共交通機関を頼れない地域に、住んだことがありません。
これは、でも、私が建てるつもりの家も同じです。おたおたしてはいけません。
「借りた家」が「建てるつもりの家」と違うのは、間取り(広すぎる)の他にもう一つ、
この景色です。
2階の窓から撮った写真。
これは、気軽に穴を掘ったり、焚き火をしたりできませんよ。
もちろん、借りた家でそんなことするつもりはありませんけど。
ただ、こういう場所で、仮住まいの一人暮らしとか、胡乱じゃないですか?
ご近所の方が、さっきから気にしています。もう何人かに声をかけられました。
「仮住まいなら、ゴミ捨て場の掃除当番はしなくていいですよ」と、言っていただきましたけど。
穴掘って埋める、焚き火で燃やす、ができないなら、ゴミ捨て場を使うことになるし、掃除当番、しなくていいのかな?
と、いうようなことを、頭の隅に置きながら、この家で暮します。
春になったら、引っ越します。
持て余した時間で問題を解決する話
時間を持て余したので、その辺をうろうろすることにしました。土地勘をつかむためと、運転技能の向上のためです。
私は運転がへたくそで、まだ一人では走れません。これではこの先困るので、なんとかしないといけないのですが、そのためには練習が必要です。練習には、
①危険の少ない道
②危険を気にせず助手席に座ってくれる人
③傷つけたところで惜しくもない車
が必要ですが、これが難しいのです。
自宅には②と③がありますが、①に欠けます。
実家には①②③の条件が揃っていますが、母がいます。母がいては、父を助手席に座らせることはできません。
ですが今、ここに阻害条件はなく、3つの必要条件が揃いました。ボンネットの を剥がし、 に貼り替えます。走ります。
気持ちのよい道です。
後続車がなければ車線変更だって怖くない。対向車がなければ右折も楽勝です。
砂利、土、雪の道は滑るけど、なんとかなります。こういう道、教習場では練習しませんでしたね。あと、ガードレールのない崖道。急坂の途中の鋭角カーブ。
なんとかなります。のろのろ走ればいいんです。
気持ちよく走るうち、思い出したことがあります。この辺に親戚がいましたよ。ちょっと挨拶してきましよう。
こういうことは普通、もっと早くに思いつきます。突然思いつくのがこの親子です。
後部座席に置いたタルトは母に買ったおみやげですが、使用目的を変更し、アポなし訪問敢行します。ごめんください。
この冬訪れたお宅には、もれなく炬燵がありました。それと、すごく大きなテレビ。出されるのは決まって緑茶。緑茶おいしいです。
炬燵にあたって、おいしい緑茶をいただきながら、家を建てる話をしました。
近くに越してまいります。畑をつくります。実家から耕作に通います。
農地法3条の農地取得要件に、
・取得農地を効率的に利用できる通作距離又は通作時間の区域内に住居を有すること
というのがあります。
そう、畑を耕すには近くに住居が必要です。私の家はまだないので、しばらく実家をつかいます。
実家から畑まで、通作時間は90分。
ナビは50分といいますが、ナビは当てになりません。正しくは90分です。私の運転ではそうなります。
農業委員会の定める通作時間(1時間以内)を超えますが、申請書類にはナビのハードコピーを添付したので問題ありません。
申請に問題はありませんが、実際通うのは問題です。片道90分を、1人で、運転できるでしょうか?この人に?
というのが、目下の問題。
すると、親戚の人が言いました
「そこに空いてる家があるから、使うといいよ」
問題、解決しました。