700粒の種

115番地に種を蒔きます。

ヒマワリの種。

あの場所がいちめんのヒマワリ畑になったら、、、

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夢のようですね。

 

夢です。

今回蒔くのは700粒。畑のほんの一部です。

 

いきさつを。

秋に草を刈りました。そして、春になるまで放っておいて、その間に、何を植えるのかを考える、という計画をたてました。

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春になったので、ヒマワリに決めました。

他に候補に挙がったのは、レンゲ、ミント、ラベンダー。

これをいちめんに、という夢を描きました。

うっとり。

 

でも、いちめんって難しいんです。

ミレーの「種まく人」みたいに豪快にばらまいて、それでいちめんになったらいいのだけど。

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種は普通、蒔いた後で覆土します。そして、たいてい鎮圧します。

覆土も鎮圧も手間なので、いちめん、簡単じゃないです。

なにより、115番地にはいろんな種や地下茎が埋まっています。

私の種が育つかどうかは、まわりの種や地下茎に勝てるかどうかということで、

これが困難。

丈の低いものはだめ、成長の遅いものはだめ、そして、コストの高いものは無理、

ということで、ヒマワリに決めました。

ヒマワリを10,000粒蒔こうと思いました。ちゃんと覆土して、鎮圧して、ね。

それが、700粒になりました。大幅なスケールダウン。

なぜかって?

 

そもそも、ヒマワリを蒔いてどうするかって、問題です。

花が咲いたら眺めます。花が枯れたら刈り取ります。それだけ。

のつもりでした。私。

ロシア映画に出てくるようないちめんのヒマワリ畑は、食用油を取るための作物です。

営農指導員の方も、食用油の原料として栽培することを勧めてくれました。

たいした収益にはなりませんけど。でも、農家の作物らしい作物です。

ところが、私はここで食料作物を作るつもりがないんです。

 

ここは長年、持ち主が使わずにいた場所です。

1年前にショベルを入れたら、一抱えもある石だの、鉄パイプだのが出てきました。

半年前に草を刈ったら、断熱材だの、絨毯だのが出てきました。

今もまだ、握りこぶしの大きさの石やビニールが出てきます。

この土地がどんな使われ方をしてきたのか、実はよく判りません。

何度も通って、いろんな人と会って、だんだんに判って来ました。いつ、誰が鉄パイプを埋めたのか、とかも。

もちろん、私は腹を立てています。今後、そのようなことをさせるつもりはありません。

で、もう少しこの土地と付き合って、この土地のことを判って、きれいにしてからと思うんです。食料作物をつくるのは。

食物をつくれる土は、他の場所にもあリますから。

 

ということで、ヒマワリは眺めるだけ。

ここはたいそう見晴らしがいいんです。路線バスも通るし、人通りもそれなりにあります。

花が咲いたら通る人に喜んでもらえるかな、とか思いました。なにより、私が喜びます。

ということで、景観用のヒマワリ(という品種があります)を蒔くつもりでした。10,000粒。

それが700粒になりました。

なぜかって?

親切な人がいたからです。

 

 

今、93番地の廃屋を片付けています。

2月に明け渡してもらう予定だったのが、まだ片付かなくて、借り手の方が片付けに通っています。

連日ご夫婦でいらして、仲良く作業をされています。

連日トラックに一杯づつ運び出しているのに、まだ片付きません。どんだけ詰め込んだんですか?

連日いらっしゃるので、ちょくちょく顔を合わせます。話をします。

「今年はハナカツミがよく咲きます。藪を払って、陽が入るようになったからですね」

「今日はダンプカーが来てました。砕石を置いていきました」

など、いろいろ。教えてくれます。

ある日、「屋根裏でこんなものをみつけました」

渡してくれたのは曽祖父のトランク。中身は明治時代の地図や書付。父も知らないものでした。父がたいそう喜びました。

私もあれこれ話します。

「畑にヒマワリを植えます」

「品種は?」聞かれました。

「景観用の大輪種」答えたら、

「サンリッチレモンがいいよ」言われました。

サンリッチレモン?切花用の品種だそうです。

「それなら売れるし」

「売るんですか?花を?」

それ、考えてませんでした。

いえ、農家になると決めた時、最初に考えたのが花卉生産でした。あっさり却下しました。

だって、花卉の販売は難しいと聞きます。市場のニーズに合わせるのが難しい。母の日にぴったり合わせてカーネーションを咲かせるとか、どんな秘技ですか?

「難しいのもあるけど、ヒマワリならできるよ。教えるよ」

なんと、このご夫妻、花卉生産販売の経験がありました。サンリッチレモン。

 

さっそく、作り方のご講義を受けます。

まず、畝を作って、マルチを張って、ネットを張るそうです。「種まく人」方式は却下。

マルチは然るべき幅、然るべき間隔で穴の開いているもの。

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この穴に一つづつ種を蒔きます。等間隔に植え付けて、均一に育てるため。さらに、雑草を防止し、土の水分を保つため。

ネットはマルチの穴にピッタリ合ったもの。これで、茎が倒れないように支えます。

ネットを張るために、プラスチックの支柱と木の板も必要です。

 

この買物に、先日付き合っていただきました。

お店の中で、奥様が紙とペンを持って計算します。

「何mの畝を何本作ったら、種は何粒?」

その結果、700粒になりました。

最初に作るのは、10mの畝を2本。畑のほんの一部です。ですが、

「いっぺんに蒔いちゃだめだよ。少しづつ、時期をずらして収穫するように」

で、700粒も一度には蒔きません。とうていいちめんにはなりません。

それでも、作業は大変。もちろん、私一人ではできません。

マルチも、ネットも、うっかり触ったらぐちゃぐちゃになっちゃうような代物です。そして、木の板の用途は判りません。

 

さて、一昨日、最初の1列を蒔きました。親切なお二人に手伝っていただきました。

その様子はまた。