廃車を撤去した話

2016年夏 93番地の道はなくなっていました。

8年ぶりに来た私は、坂の途中で車を降り、藪をかきわけて歩きました。

そして、たどり着いたところには、こんなものがありました。

f:id:aldertree:20170306185530j:plain

これ、放っておいていいんですか?

 

93番地の土地家屋を貸した人は、

「契約が終わったら、原状に復帰してもらう」と言います。

原状復帰?どうやって?

運び出すための道がありません。

契約が終わったら?

でも、この国には借地借家法という法律があるんです。

aldertree.hatenablog.com

心配です。

 

2016年秋 93番地に道ができました。

f:id:aldertree:20170306185810j:plain

いい道でしょう?春になったら筍が収穫できます。収穫しないと道がなくなります。

 

2016年冬 近くで工事がありました。

工事車両をうちの駐車場に置きます。通路にうちの敷地を使います。

この辺で工事があるときは、その辺の空いてる場所を使うんです。どうぞ使ってください。 

私は仕事を休んで見に行きました。立ち会いとかじゃないです。その頃仕事に嫌気がさしていたんです。だから行きました。「働く車がいっぱい!見なくちゃ!」つまり、野次馬です。

 

工事車両は93番地を通ります。93番地には廃車があります。工事の現場監督が腕組みをして言いました。

「この車、どうするんです?」

土地を貸した人は、期限が来たら撤去してもらうと言っています。

それが簡単にいかないだろうと、野次馬は心配しています。

「これ、動かすの、難しいですよね?」

タイヤが地面にめり込んでいます。荷台に木が生えています。それでも、廃車の持ち主は「ちゃんと動く車です」って言うんです。

「動かしたいなら」現場監督が言いました。「うちのショベルで牽引できますよ」

 

うちのショベル!

f:id:aldertree:20170306190704j:plain

なんと頼もしい姿でしょう。

そのうえ、うちのブル!と、うちのダンプ!も、手伝ってくださると。

その場で電話しましたよ、廃車の人に。「すぐに来てください。ご相談があります」

そして、どかしてもらうことになりました。5台の廃車を。

 

物を動かすには、動かす先が必要です。場所をつくります。

目の前に空き地があります。空き地の真ん中に芋が生えてます。一畝だけ。

隣にまとまった畑があって、大根と白菜が植えてあって、なぜか空き地を挟んで芋が生えてるんです。一畝だけ。

地目は雑種地です。

畑の人に、「ここを整地したいので、明け渡してもらえますか」と頼みました。「まだ収穫が終わってない」断られました。

それはそうです。何年も耕してきた場所です。明日立ち退けとか、そんな話聞けません。

でも、工事のスケジュールがあるんです。それと、私の休暇の都合が。

 

5台の廃車を駐車場に置くことはできます。先日まで近くの法人に貸してあった駐車場が、今は空いています。だから工事に使っているんです。そこに廃車を置くことはできます。最初はそのつもりでした。でも、

なんか違う。

駐車場は公道に面していて、人通りがあります。3軒の住宅に接しています。芋の畑は敷地の奥にひっそりあります。廃車を置くならこっちです。

考えました。

畑の人には息子さんがいて、息子さんは中古車ディーラーをしていて、車を置く場所を探している。うちの駐車場が手頃だけど、よそに貸してあるから使えない。いえ、使えます。

芋の畑を整地して資材置場にすれば、駐車場が使えます。

この話をもっていくと、畑の人は超特急で芋を収穫してくれました。翌日資材置場ができました。

 

その日、私は東京に戻りました。次の日から仕事に戻りました。まだ続けていますよ、その仕事。

 

この一連のばたばたで、私は一切お金を使っていません。誰も使っていません。

牽引は工事監督のご厚意で、資材置場の整地は「ついで」で、やっていただきました。工事車両を置くのに使う場所を少し広げて、「資材置場」も使ってもらったんです。

廃車の人には「当面」無料で、資材置場を使ってもらいます。

ディーラーの人にも「当面」無料で、駐車場を使ってもらいます。

「当面」というのは、私がここに移り住むまでです。いつになるんでしょうね?

廃車の人には、できたばかりの資材置場の整備を頼みました。排水がうまくいかないとか、いろいろあるんです。

ディーラーの人には駐車場の管理を頼みました。以前の借り手が又貸ししていて、又借りしていた人が車を置きにきたりするので、そのへんよろしくです。

 

こんなふうに、あれやこれやがうまく運んだのは、あのとき仕事に嫌気がさしたからなので、ときどき仕事に嫌気がさすのはよいことですね。

 

ところで、93番地の借り手の人は、もう1台車を持っていました。まだ、その辺に置いてあります。

f:id:aldertree:20170306191619j:plain

牽引のとき「ドアが開かなくて」残されたようです。その後は「バッテリーが上がってて」、バッテリーを交換した後も「エンジンがかからなくて」、動けずにいます。

「ちゃんと動く車です」って、言ってたじゃないですか。

でも、私は気にしていません。いずれどかしてもらいますけどね。

ここは48番地です。貸した土地ではないので、借地借家法の適用はありません。