今、私がここにいる理由
紫陽花が咲きました
引っ越してきた日、こんな姿で立っていました。
住む人のいない家の庭で咲いて、枯れていた花は、思いがけない色でした。
紫陽花は開花から日を経るにつれて色が変わります。土壌のPHでも変わります。
ある年、庭の紫陽花の色が変わった。不思議に思って根本を掘ってみたら、、、
というミステリを読んだことがあります。
が、この紫陽花は白いままです。
色の変わらない紫陽花も素敵です。
梅雨
梅雨は非常に苦手な季節で、
例年、蒸し暑さにじわじわとHPを削り取られて、気力のない日々を送ってきましたが、
「こっちの梅雨って、こんなもんですか?」
ことあるごとに聞いています。私の知っている梅雨じゃないです。過ごしやすいです。
暑いときは暑いです。
晴れた日の畑とか、容赦なく暑いです。紫外線が痛い感じの、びしっとした暑さ。
それが、夕方にはすうっと涼しくなります。
雨も降ります。こんな感じ。
でも、雨の日は涼しいので。
7月です。
半夏生(はんげしょう)、初めて蝉の声を聞きました。
そして、まだ、「蒸し暑い」に遭遇していません。
そして、私は不安を募らせています。
住宅の省エネルギー基準
「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」により、住宅の建築主に対して、一定の基準以上の省エネルギー性能の実現に対する努力義務を課しているのが「住宅の省エネルギー基準」です。1980年(昭和55年)の省エネ法の制定以来、法律の改正ごとに強化されてきました。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/
現在の省エネ基準は「努力義務」ですが、低利融資・補助金・減税などの優遇があって、基準を無視する方が努力を要する仕組みです。
キャッシュで家を建てるとか、DIYで建てるとか、神の宿る社を伝統工法で建てるとか、じゃなくて、
普通にローンを組んで、普通にハウスメーカーに頼んで、普通の家を建てるなら、省エネ基準適合住宅になるはずです。
私が建てる家もたぶんそうなります。
家の価格というのは判りにくいのですが、この数年でボトムラインが上がっているのは確かです。
2010年に500万円台の住宅を売り出したハウスメーカーが、今は800万円台の家の安さをアピールしています。6割UPです。
これはもちろん「国の進める低炭素社会へ向けてのロードマップ」と関係あるわけです。
目指すべき最終の水準は、「ネット、ゼロ、エネルギー住宅(ZEH)」とされています。これは、住宅の躯体と設備の省エネ性能の向上と再生可能エネルギーの活用等により、年間のエネルギー消費量が正味でゼロ、または概ねゼロとなる住宅のことで、2030年には新築住宅の標準とすることが目標とされています。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/
おお、すごい。
で、何が言いたいかというと、
この家、冬になったら寒いだろうなです。
冬になる前に引っ越すつもりだったんです。
どうやら、そうはいかないみたいです。
季節の装備
私は電気ストーブを持っています。定格電力は800Wです。オーブントースターと同じ仕組みですが、台所にあるオーブントースターは900Wです。
あと、炬燵と、ホットカーペットと、電気毛布を3枚持っています。
貧弱な装備ですが、「冬になる前に引っ越すんだからいいや」思っていました。
どうやら、そうはいかないみたいです。
なので、せっせとホームセンターに通って、あれこれ眺めています。薪ストーブとか置いてあるんですよ、この季節に。
そして、すだれを買いました。1枚300円のすだれがいろいろ使えます。
目隠し
台所。窓を開けると、ご通行中の皆様から丸見えの造りなので。
虫除け
トイレ。網戸がないので。
日除け
2階の部屋。3方に窓があって、朝と昼と晩に日が射します。
冬の前に夏、ですから。
当初のつもりより長く住むことになるかもしれない、
となると、この家、いろいろ気になることが出てきました。
「更地にして売ろうか、リフォームして売ろうか」の家を借りたのだから、あちこち傷んでいるのは当然なのですが、私の使い方が投げやりで、これが当然じゃないんです。
表札はガムテープのままだし、チャイムは鳴らないし、ゴミを捨てるのにダンボールの箱を使っています。
まあ、このへんは改めるつもりはありません。
訪ねてくる人は限られてるし、ガムテープの表札は気に入っているんです。
500mlペットボトル×24本の箱(スーパーでもらいました)を2つ、3つ、4つと並べると、ゴミの分別にちょうどいいんです。
改めたのは、
濡縁の釘が緩んでいるのを避けて座るのをやめました。
釘を打ち直しました。10本ほど。1分もかかりません。それを今まで放っておいたんです。
欄間の障子を貼りました。
掃き出し窓の上に欄間があって、掃き出し窓の障子は貼ったけど、欄間は放ってありました。別に不自由はありません。けど、脚立を買ったので、障子紙があまっていたので、貼りました。
BSのアンテナを撤去しました。
二度と電波を受信することのないアンテナが庭先にありました。NHKの人が気にするかもしれないので片付けました。VHF/UHFアンテナも撤去したいけど、屋根の上には上れません。
あと、よしずを立てました。
たまたまホームセンターで見かけた1300円のよしずが庇の高さにぴったりで、嬉しくなって買おうとしたら、「軽乗用車には積めません」と言われて、でも、もしかしたら積めるかもしれないと頑張って、まんまと持ち帰ったものです。
くくりつける柱が足りなくて、物干し台にあった竿を縦にして穴掘って立てました。たまたま高さがぴったりでした。竿は後日補充しました。
よしずの向こうは空き地で、空き地の向こうは道路で、この場所もご通行中の皆様から丸見えだったのですが、よしずを立てたら居心地の良い場所になりました。
屋根がありますが、屋根が破れているので、私はここを濡縁と呼んでいます。
やたら居心地の良い場所です。
家の中にいるのがもったいないほどの、いい空気。
私はここでお茶を飲みます。引っ越してきたときからの習慣です。
よしずがなくて丸見えのときも、ここでお茶を飲んでいました。
よしずがあった方が落ち着きます。緩んだ釘がない方が落ち着きます。
朝起きて最初にするのがお茶を飲むことで、帰宅して2番めにするのがお茶を飲むことです。
そして一昨日、一週間の仕事を終えて帰宅して、犬を撫でた後、ここに座ってお茶を飲みながら、ぼんやりと屋根の破れ目から夕空を眺めていたときに、ふと思いました。
ああ、これが理由だったのかもしれない。
今、私がここにいる理由
2016年夏、8年ぶりに93番地を訪れた私は、その荒れた様子にたじろぎながら、なぜかすんなり、「この地で暮らしたい」と思いました。
その時感じたこと、ブログの最初の記事に一言だけ書いています。
とてもいい匂い
ここは93番地と違って、すだれやよしずで憚るくらいの人目があります。でも、産業施設はなくて、ゆったり区画された住宅しかなくて、空気を痛めつけるものからは離れています。
93番地の匂いとは違うけど、「いい匂い」のする場所です。
私達が呼吸する空気、酸素をつくるのは光栄養生物ですが、木や草や苔や藻にはそれぞれの匂いがあるので、場所によって、季節によって、時間によって、天候によって、空気の匂いは違ってきます。
ここは近くに林があって、ヒバやヒノキの匂いが届くのですが、庭では今ヨモギが伸びているので、シネオールの芳香も混ざります。
季節ごとに、時間ごと、天候ごとに、変わる「いい空気」を呼吸していると、「なんかまだ頑張れる」って思うんです。
もしかしたら私は、匂いに誘引されてこの地に来たのかもしれません。