勤務を要しない日(3日目)
水曜日、午前8時半、池。
秋になって水かさが増えてきました。
この池から麓の田に用水路が繋がっています。あとは空に向かって開いているだけで、流れ込む水はありません。
盛夏には満水時の半分ほどに水量が減りました。その時期に測量できれば良かったのですが。
でも、水の中に入らずに測量する方法もあるようで、
「できるだけ面倒のない方法でやってください」
先日から測量の方が来てくれています。この日は池の周りの下調べということで、朝からお二人来てくれました。
「よろしくお願いします」
打ち合わせをしているところに、T工業の作業員の方がみえました。男性が二人、女性が一人。115番地の作業を終えて、これから48番地に回ります。
「急なお願いですみません」
そして、今度は私が115番地へ。
水曜日、午前9時、115番地。
に、白い、美しいダンプトラックが停まっています。荷台にはハンマーナイフモア。
この草刈機にはいろんなタイプがありますが、お持ちいただいたのはカタピラのついた自走式のもの。
Y建設さんはこれを「ガソリン代だけ」で貸してくださいました。
「私に使えますか?」
「だいじょうぶ」
しっかり頷いていただきました。
使い方を教わります。これは一回で覚えないとね。
チョーク、スロットル、操向クラッチ、ナイフクラッチ、変速レバー、刈高調整ハンドル、と、エンジン停止ボタン。
やってみましょう。
あ、おもしろい。
「暫くお預けします。刈り終わったら電話してください」
そして、白いダンプトラックは去っていきました。大事な機械をお預かりしました。
48番地では三人の方が私のために働いてくれています。
池の周りでは測量の方、お二人が。
日差しは暖かく。風は涼しく。
外で働くのが気持ちのいい日です。
115番地には犬と私だけがいて、どんどん景色を変えていきます。
犬がいるのは車の中ですけど。閉じ込められて文句を言っていますけど。
水曜日、午後4時半、115番地。
溝にはまったり。土手に乗り上げたり。石にあたってエンストしたり。ビニールを細断してエンストしたり。
でも、ずいぶん刈れました。
さて、そろろそ片付けないと。
ハンマーナイフモアと一緒に、ブルーシートとロープをお預かりしています。
こんな大きなシートと、長い長いロープ、私、扱ったことありません。
でも、Y建設さんは、私が扱えると思って置いていかれたんです。
なら、しっかり扱ってみせましょう。お借りした機械はきちんと保管します。
暗くなる前に、疲れきる前に、作業を止めて片付けます。あと1列刈ったらね。
と、やってるところに、1台の車が入ってきました。なんか高級っぽい車。が、迷いなく、まっすぐ、うちの畑に停まります。どなた?
「やあ、頑張りましたね」
T工業さん。K町からいらしてくれました。
「この週末に全部刈ります。いつ土が来てもだいじょうぶですよ」
私、ちょっといばります。
「それが、少し遅くなります」
K町の道路を作り直すことになったそうです。大型重機を何台も通すの、大変です。それに、
「思ったより水気の多い土で、暫く積んだままにして、重みをかけて水を出します」
とのこと。では、その辺はお任せしましょう。
それより、今日の作業の報告をいただけるとのことで、
水曜日、午後5時、48番地。
この日の作業のBeforeAfter。
違いって、町の灯が見えるだけですね。でも、町の灯が見えるんです。
私が2週間かけて攻略できなかった蔓の多重構造が、きれいに取り払われました。
「明日、もう1日、チェーンソーと刈払機を入れます」
この場所がこんな風に拓けたの、何年ぶりでしょう。
「できればバックホウを入れたいけど、あいにく出払っていて」
いえ、充分です。足元がきれいに片付いて、転ばずに端の方まで歩けます。
週末に父が来るんです。足元がきれいに片付いてるの、とても助かります。
水曜日、午後5時半、115番地。
T工業さんをお見送りした後、ハンマーナイフモアを雑貨屋さんの家の裏に運びます。
ここなら親切なご夫婦が見てくださるので、安心。
大きなシートと、長い長いロープをあれこれやっている時に、携帯が鳴りました。
「明日、バックホウを持って行きます」
と、T工業さん。びっくりしましたよ。父のために、ですって。
空にはまるい、大きな月が昇っています。
私の10月の「勤務を要しない日」が終わります。
誰かに話を聞いてほしい、そんなできごとがいっぱいあった3日間でした。