2本の木
伽羅木の人、判りました。
聞くまでもなく、ね。
雑貨屋さんの庭を覗いたら、そっくりのがあったんです。
植木屋さんが持ってきたんですって。2つ。
それを、雑貨屋さんったら、1つ分けてくれたんです。
でも、この2つは対の木ですよ。
玄関の両脇に揃えて置いたら映えるでしょうね。
と思いつつ、
玄関の脇に植えました。
対の木の、1本はこの家に。
1本は雑貨屋さんの庭に。
木を植えながら、こんなことを考えていました。
私が建てたこの家も、いつか、住む者のない家になるでしょう。
そしたら、
この家を気に入った誰かが、たまに様子を見に来るでしょうか?
その時は藪に覆われているだろうこの場所に、がんばって来るでしょうか?
そしたら、その時、
この木がここにあったらいいな。
古い家の周りにたくさんの木があります。
いつ、どうやって根を下ろしたのか、判らないのがほとんど。
4日前から金木犀が咲いていますが、私、その木のことを判りません。
寝室に匂いが届くようになって、「ああ、そこにあったんだ」と。
いったい何本の、何種類の木があるのか判らないので、いつか調べようと思います。
そう、老後の楽しみに。
ですが、2本の柿の木。
この木のことは判ります。今から柿の木の話をします。
93番地の古い家、
たくさんの人が住んで、たくさんの子どもが生まれた家、
に生まれた最後の子どもたち、小さな2人の男の子、
が種を埋めました。
おばあちゃんに干柿をもらって、食べて、種を埋めました。
兄弟は小さくて、自分で穴を掘ることができなくて、馬車道の馬の足跡に埋めました。
芽が出たとき、おばあちゃんが縄を張って道を封鎖したそうです(えっ?)。
その木が今もあるので、昔ここに馬車道があったのだと判ります。
2016年夏、
私は8年ぶりにこの山に来ました。
突然、古い家のことが気になって来てみました。
藪を掻き分けて来た時、家のそばに柿の木がありました。
1本は父の木。1本は叔父の木。
この叔父を、私は知りません。
私が生まれたすぐ後に亡くなりました。
兄弟は仲がよく、弟は兄より格好よかったそうです。
私は2本の柿の木に会えて嬉しかったです。
そして、伽羅木。
対の木の、1本はこの家に。
1本はあの人の庭に。
あります。