引っ越しが、やっと

終わりました。

 

引越は何度もしています。

大抵は、新しく住む家に夢中で、引き払う家の片付けはしぶしぶ。

「敷金をいっぱい返してほしい」からきれいにするとか。

まあ、それが普通です。

今回も、新しい家に夢中で、出る家の方はあまり考えたくなかった。

だって、汚いんですよ。

私が汚くしたんです。

 

でも、荷物を全部運んで、ゴミを片付けたら、肩の荷が下りました。

つまり、気になっていたわけ。

あまり考えないようにしていたのにね。

 

こういうこと、よくあります。

意識が逃げていても、無意識がしっかりキャッチしてること。

が、体に出たりします。

とても難しい仕事をしてる時、睡眠時間削って無茶やって、それでも頑張れるのに、

終わった途端倒れるとか。

 

なので、ちゃんと片付けようと思いました。

無意識に蓋をし続けると、お腹を壊したりするんですよ。

 

 

窓を洗って。

玄関を洗って。

台所のシンクも磨いて。

雑巾をきつく絞って畳を拭きました。

古い畳なので、それほどきれいにはなりません。

でも、這いつくばって拭いていたら、掃除機の吸い残しがみつかりました。

犬の毛。

 

犬と暮らしていたんです。

借りた家に連れて行くのは遠慮しようかと思いました。

でも、「どうぞ」と言っていただきました。

なので、犬と暮らしてきました。

 

去年の5月、タケノコの時期、

設備業者さんが職場に地図を持ってきました。

「今手がけてる家、屋根が上がったから見においで」

その頃の私ったら、苦労して2台目の車を手に入れて、恐る恐るその辺のホームセンターとかを開拓していました。

買ったばかりの車を、引っ越してきたばかりの町で、出勤初日にぶつけて壊して、ようやく2台目を買ったところ。

渡された地図の場所は、幹線道路をずーっと行った先でした。まるで自信ありません。

が、今見たら、妙ですね、ほんの10キロ先でした。

とにかく、当時の私にはずーっとな距離で、でも、設備業者さんたらにんまり笑って、

「頑張って、おいで」

この人、私の運転技量をご存知なんです。その上で、

「待ってるよ」

老獪な教授に難題を吹きかけられた学生の気分。

で、行きました。なんと、行けました。老獪な教授は人を育てるのが上手なんです。

で、家を拝見した後、帰る段、ふと考えました。

「この道をこのまま行けば実家だ」

何度か走った道です。間違えようのない一本道。

「行ってみようか?」

自信はありません。何度か走りましたが、隣に指導教官(父とか姪とか)がいましたからね。

一人で行くとか、

「できるかな?」

できました。間違いようのない一本道でも、間違いそうになりました。合流とか分岐とかあるんですよ。で、高速道路の看板とか見えてくると、「うっかり乗せられたらどうしよう?」とか、怖い思いをしましたよ。

でも、できました。母がむやみに驚いて、私が一人で来れるはずがないと言いました。挙げ句に、

「そうか、この子が一緒にいたからだ」

犬を抱き上げて。

いや、犬は助手席で寝ていただけです。なのに、

「おまえのおかげだ。ありがとう」

犬にお礼とか言ったり。

 

母の言うこと、ぜんぜん理屈が通ってません。

でも、

知ってる人の殆どいないこの町に来て、

やったことのないこと、車に乗るとか、草を刈るとか、種を蒔くとか、をやるとき、

いつも側に犬がいました。

あのとき、「どうぞ」と言われたから、できたこと、いっぱいあるような気がします。

 

なので、犬の毛、置いていったらだめでしょ。

埃にまみれて襖と敷居の間に挟まってるのとか、だめでしょ。

この家はきれいにしてお返しします。

と、思いました。

 

掃除が終わって、くたびれて、ごろん、寝転んだら、西の窓はこんな景色。

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すごくないですか?この窓。空の他に何もない。

 

引っ越しは何度もしました。

いろんな家に住みました。

でも、こんな窓は初めて。

初めてで、そして、たぶん最後。

ということに、この家で過ごす、最後の日に気が付きました。

なんか、もったいない気持ちです。ずっと、空を見ていました。

そして、

 

・・・

 

寝ました。ぐっすり、気持ちよく寝ちゃってました。

私としたことが。

 

でも、この家で過ごす最後の日、これで良かったと思うんです。

家は寝起きする場所でしょ?

寝るって、正しい家の使い方でしょ?

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さて、朗報。

この家、リフォームして売るか、更地にして売るか、と聞いていました。

その「売る」がなくなりました。「更地にする」も。

 

持ち主の方のお姉さんが使われるそうです。

水回りとか、最小限のリフォームをして、アトリエにされるそうです。

ときどき来て使うアトリエ。

お姉さんはプロの絵描きさんです。

優しい絵を描く方です。

いつか、お会いできるでしょうね。