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春はまだちょっと先

さて、

カーテンを吊って、温泉を開拓して、車を運んで、庭を眺めて、引っ越し終了。

ではないです。夕方には東京に戻ります。荷造り全然してません。仕事の契約が残っています。退職日は3月31日です。引っ越しは4月1日です。忙しいです。

 

忙しい私が、今から何をするかというと、その辺をうろうろします。土地勘をつかむためと、運転技能の向上のためです。

行き先をナビと相談します。湯治場のそばに渓流がありました。その水源を見たいです。

 

つづら折り。道の高さに、手を伸ばせば届く距離に、民家の屋根があります。

というルートを案内されて、なぜか出発点に戻りました。私、何をしたんでしょうね?

目的地をセットし直します。花見の名所。これならナビもまちがえないでしょう。

 

早春の山は硬質の光に包まれて、無音。 

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冬の間は止まっていたのでしょうね。 

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目的地に着きました。

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シーズンには渋滞もあるそうですが、誰もいないのでゆっくり鑑賞できました。

移動時間、ナビは20分と言ったけど、60分かかりました。ええ、迷子になりました。

運転の練習のためには適切な時間です。

 

無事にたどり着きましたよ

20分の道程ですし。信号2こしかありませんし。 

その2こめで右折して、盛大にクラクション浴びましたけど。私、何をしたんでしょうね? 

まあ、無事にたどり着きました。 

 

無事にたどり着いたので、家を見て回ります。

空き家、を借りたわけですが、不動産屋の扱う物件ではないので、いろんなものが残っています。洗濯機や冷蔵庫などの家財は取り払われていますが、台所に調味料が置いてあったり、壁に時刻表やカレンダーが貼ってあったり、押し入れにアルバムが積んであったり。

調味料は捨てました。壁に貼ってある物は触らずにおきます。アルバムは湿気のない場所に立てて置きました。

 

この家の持ち主は一人暮らしでした。一人で住むには広すぎる家で、ずっと一人暮らしでした。1年前に倒れて、車椅子の生活になりました。古い家にはバリアフリーの配慮がありません。一人暮らしができなくなって、近くの施設に入りました。後を預かったのはご兄弟で、家をリフォームして売却するか、更地にして売却するかを検討中です。

 

持ち主の人はたまに自分の家を見に来るそうです。中には入れないので、外から眺めて帰るそうです。

私は庭を手入れしようと思います。立ち枯れた紫陽花は「じゃまなら切ってもいいよ」と言われたけど、春になれば葉がつきますよ。持ち主の人が好きな花かもしれません。手入れの仕方はネットで調べます。それか、誰かに聞きます。教えてくれる人がたくさんいそうです。

 

なんてことを、濡れ縁に座って、お茶を飲みながら考えました。今日は少し暖かいです。

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車が届きました

長距離を陸送してくれた夫には、沸かしたてのお湯でカップ麺を振るまいます。

彼はこの後東京に戻ります。家をお借りした方に挨拶して、すぐにとんぼ返り。忙しい人ですね。

父も今日帰るので、一緒に実家まで行ってもらいます。

 

私の車、明るい中で見るときれいな色ですよ。夜に買ったんで判りませんでした。

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忙しい夫から、3分で引き渡し説明を受けます。

車検証はここ。スペアキーがないので作ること。サイドブレーキは足で操作。シフトレバーはワイパーの後ろ。

了解、です。

エンジンを始動します。サイドブレーキは足で操作、シフトレバーはワイパーの後ろ、で、発進。

向かうのはガソリンスタンド。給油のしかたを教わります。

停めるのはここ。給油口はここ。こっちの機械にお金を入れて、おつりはあっちの機械から。

次からは一人で、はい、やります。

ここで、夫が降車。後ろについている父の車に乗り換えます。

 

スタンドを出て、しばらく2台で併走します。すごく良い天気。雪を被った成層火山がきれいに見えます。やがて交差点に差し掛かって、隣の車は、

ぱん、

軽くクラクションを鳴らして、曲がっていきました。私は直進。ここからは一人です。

橋を渡って、左に折れて、川に沿って走ります。傾き始めた太陽が水面にきらきら映ります。

初めて乗る車で、何度か通った道を、これから住む家へ。

 

無事にたどり着けるでしょうか?

歴代が通う湯治場

仕事の面接を終えて戻ると、家の様子が変わっていました。

不思議な事がおきていました。

窓にカーテンが吊ってあります。居間に炬燵が作ってあります。炬燵の上におにぎりとお茶の道具が並んでいます。

台所にふきん。洗面所にタオル。トイレにトイレットペーパー。

玄関にはポストと表札。表札はガムテープとマジックインキのですけど。

この魔法を使った人たちは、疲れて炬燵で寝ています。

疲れますよ、これは。

私はといえば、鼻水が止まりません。鼻水を流しながら面接を受けたので、落ちたときの言い訳は万全です。

 

お風呂に入たいと思いました。

ボイラーを修理してお湯が出るようになったけど、お風呂は沸かせません。修理代をケチったからです。

お風呂に入りたいと思います。

3人がそれぞれ、近くのお風呂を検索します。WindowsAndroidiOSが同じ答えを出しました。

町中のスーパー銭湯まで15分。山間の湯治場まで15分。

「うちの人たちは歴代、この湯治場に通ってきた」年長者の発言で、行き先決定。今から3代で行って歴代度を更新します。

 

良い景色です。

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温泉には地下のマグマを熱源とするもの(火山性温泉)や、高温岩体を熱源とするもの(非火山性温泉)や、よくわからない熱源のものがあります。

古くからある温泉は「山の動物が傷を癒やしているのを猟師が見つけた」的な、自然に湧き出たものがほとんどです。

が、地球の深部は熱いので、地下水には温度勾配というものがあり、だいたい100m掘れば3 ℃上がる勘定で、近くに山があろうがなかろうが、深く掘れば、そこに地下水があれば、温泉が出ます。近年のボーリング技術の進歩と共に、あちこちに温泉が出現しました。

が、私のものさしでは、渓流のそばにあるのが正しい温泉です。理由は、渓流が好きだからです。

 

ひなびた温泉です。玄関を入ると、「裏の畑で採れた」的な芋や菜っ葉が並べてあります。タオルの貸出無料、信用金庫の名前が入っています。93番地の家を建てた人が通ったここは、火山性の自噴泉。みつけたのは農夫で、傷を癒やしていたのは雉だそうです。

ところで、入湯料300円。に驚いたのは私だけで、同行の地元民によると、「この辺の温泉はそんなもん」だそうです。

これは毎日通ってしまいそうですね。鼻水もぴたり止まりました。

 

正しい温泉につかって疲れを癒やして、姪は帰って行きました。仕事休んで来ちゃったんですよ、この子。またいらっしゃい、温泉おごるから。

父はもう一晩泊まります。

あれやこれやが決まったので

急いで車を手配します。ネットで中古車を探します。

軽乗用車、オートマ、ナビ搭載、車検あり、が検索条件。

これを予算20万円で。予算は諸経費込の引渡し価格です。

 

今回は軽トラは見送りました。自分の家が建つまではヤギも飼えません。

 

車幅・車長の小さい車が扱いやすいので、軽自動車。すぐに迷子になるのでナビ搭載。高速道路は乗りません、etcは要りません。メーカー、車種は問いません。違いが判りません。

 

ありました。2004年式、軽トールワゴン。走行距離9.9万キロ。オートマ、ワンセグナビ搭載、車検2年を付けて17.5万円。買いました。

軽自動車って車庫証明いらないんですね。手続き簡単。ナンバーは使用地でも東京でも、好きな方を選べます。

保険も加入しました。対人対物賠償無制限。車両保険はつけません。免責額が車両価格を上回る車両保険って、意味ないでしょ?

これを、借りた家まで運びます。夫に運んでもらいます。よろしくね。

 

私は一足先に現地入り。就職活動に挑みます。

農業を開始しても、当座は収入は見込めません。支出はたくさん見込めます。

私の書いた営農計画書によると、野菜1,000㎡、果樹4,000㎡、を作ることになっています。

1,000㎡はすぐに耕せる土だけど、4,000㎡が問題です。一時転用で公共事業に貸していた土地で、しっかり整地されています。返すときに整地してもらっちゃったんです。雑草が生えなくて助かったけど、雑草も生えない土では果樹も育ちません。トラクターも入らないので、まずは油圧ショベルを入れます。土木工事です。

それから土質を調査して、たぶん土壌改良が必要になって、苗を買って、植えて、マルチを張って、ネットも張ることになるでしょう。たくさんお金がかかります。仕事、探さないとね。

 

新幹線を降り立つと、駅に車が来ていました。「たまたま近くに用があったので」、落ち合うことにした父の車には、敷布団が3枚積んでありました。それと、鍋やら、食器やら、掃除機やら。

車はもう1台来ています。「じいちゃん一人じゃ心配で」付いてきた姪。の車には、掛け布団が3枚積んでありました。それと、ストーブやら、カーテンやら、食料やら。食料の一部は調理済みです。大量のおにぎり、と煮物。こんな大量のおにぎりをつくった人は、今頃疲れて炬燵で寝ているはずです。今度肩もみに行くからね。

農地法3条許可

が、下りました。

 

申請書を提出して、盆栽を撤去して、委員会に出頭して、審査を受けました。

審査で聞かれたのは、

「本当にご自分で耕作するんですか?」

はい、やります。

「作物をつくった経験は?」

まったく、ありません。

「お住いは東京ですよね?」

4月から市内に越してきます。

「ヤギを、飼うんですか?」

飼います!

 

収支計画とかは、あまり聞かれませんでした。

「Mさんに協力してもらうんですよね」

で、審議終了。すごいです、Mさん。当の私は全然すごくないので、だいじょうぶでしょうか?

 

ともあれ、私、農家になりました。

春になったら

「そこに空いてる家があるから使うといいよ」の家。

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家賃無料。通作時間15分。

水道が使えます。電気が使えます。ボイラーを修理して、今日からお湯も使えます。 

日当たり良好。電波状態良好。閑静。 

を、お借りしておきながら、一つだけ文句を言います。

 

広すぎます。

 

さっきから、私、うろうろしてますよ。パソコンと、ルーターと、ケーブルを、別の部屋に置いちゃって。鞄と、コートと、携帯も、別の部屋に散らばってます。家が広すぎるからです。

 

 

ここで、私の「借りた家ぐらし」適性について書いておきましょう。 

私は一戸建に住んだことがありません。 

この地方に住んだことがありません。

通作時間90分の実家に住んだことがありません。 

ボイラーのパイプが凍結破損する家に住んだことがありません。

私が生まれ育ったのは「はざ木」のある地方です。その地方のあちこちで、ずっと社宅住まいでした。小学校を4つ、中学校を2つ、通いました。高校を出て、大学に入って、私が家を離れた後に、実家が引っ越しをしたんです。 

歩いて行ける距離にスーパーマーケットがない地域に、住んだことがありません。

公共交通機関を頼れない地域に、住んだことがありません。

 

これは、でも、私が建てるつもりの家も同じです。おたおたしてはいけません。

「借りた家」が「建てるつもりの家」と違うのは、間取り(広すぎる)の他にもう一つ、

この景色です。

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2階の窓から撮った写真。

これは、気軽に穴を掘ったり、焚き火をしたりできませんよ。

もちろん、借りた家でそんなことするつもりはありませんけど。

ただ、こういう場所で、仮住まいの一人暮らしとか、胡乱じゃないですか?

ご近所の方が、さっきから気にしています。もう何人かに声をかけられました。

「仮住まいなら、ゴミ捨て場の掃除当番はしなくていいですよ」と、言っていただきましたけど。

穴掘って埋める、焚き火で燃やす、ができないなら、ゴミ捨て場を使うことになるし、掃除当番、しなくていいのかな?

 

と、いうようなことを、頭の隅に置きながら、この家で暮します。

春になったら、引っ越します。

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