仕事が決まりました
鼻水を流しながら受けた面接は不採用、でしたが、
その前にもう一つ受けていました。3週間前です。
「結果はすぐにお知らせします」と聞いていました。
結果、昨日お知らせいただきました。4月1日の採用枠です。
こういうフェイントが来るとは思いませんから、雇用保険とか、健康保険とか、あれこれ調べていましたよ。
お知らせが来て嬉しいです。
勤務地、なかなかアーバンなところです。銀行も、デパートも、映画館も至近。
そして私は、自分の生活ビジョンの瑕疵に気が付きました。
先日、借りた家で炬燵にあたっていたら、庭先から声を掛けられました。初めて会う方です。
「財布を拾ったんだけど、この家の人のものじゃないですか?」
「違いますね。交番に届けられてはどうでしょう?」
「交番は麓の町まで行かないと、、」
で、なぜか私が警察に電話して、財布の中身を改めて、持ち主の勤務先がわかったので、勤務先に連絡しました。財布は拾った方にお持ちいただきましたが、後刻、落とし主が引き取りに来て、うちにもお礼を言いにきました。
こういう所に住むわけだから、パンプスとか、スーツとか、必要ないよね。という気になっていました。うっかり、里山の雰囲気にのまれていました。
が、職場がアーバンじゃなくたって、パンプスくらい必要です。冠婚葬祭とかありますし。引越荷物、見直しました。
引越荷物です。
石です。
クロゼットの中身たくさん残したまま、石を梱包していました。
理由があるんです。説明させてください。
これは大学の研究室で働いていたとき、研究代表の先生にいただいた石です。
海外に地質調査に行かれる先生に、「おみやげは何がいい?」と聞かれ、私は「石」と答えました。
頭にあったのはこういうのです。
いただいたのが上の石です。
花崗岩です。花崗岩は大陸地殻を構成する比較的軽い岩石です。軽いので、海洋地殻の上に乗って大陸地殻をつくっています。
が、この石はずっしりと重量があります。金属の脈が入っているんです。
熱水性鉱床の研究を専門とされる先生は、ジャングルの何処かでこの石をみつけ、「よいものをみつけた。うちのお手伝いさんが喜ぶだろう」と、お持ち帰りになりました。
航空機の超過手荷物料金を払われたので、安くない石です。
もう一つ、石です。
手前右が水晶で、左の星型は白雲母。きれいでしょ?
もう一つ。
これは方解石。割るのが楽しい石です。
こういうものを、楽しく梱包していました。
布団と鍋釜食器、掃除機、ストーブは支援物資が届いてますし、
冷蔵庫、洗濯機、電子レンジは持っていったらこの家の人が困るので、
運ぶのは、石と、着替えと、本と、パソコン、くらいです。それと、犬。
借りた家に連れていくのはどうかなと、何日か悩みましたが、思い切ってお願いしました。
「どうぞ、気にしないで」と言っていただきました。
最後にもう一つ、大事なもの。
ハンノキの種。持っていきます。
春はまだちょっと先
さて、
カーテンを吊って、温泉を開拓して、車を運んで、庭を眺めて、引っ越し終了。
ではないです。夕方には東京に戻ります。荷造り全然してません。仕事の契約が残っています。退職日は3月31日です。引っ越しは4月1日です。忙しいです。
忙しい私が、今から何をするかというと、その辺をうろうろします。土地勘をつかむためと、運転技能の向上のためです。
行き先をナビと相談します。湯治場のそばに渓流がありました。その水源を見たいです。
つづら折り。道の高さに、手を伸ばせば届く距離に、民家の屋根があります。
というルートを案内されて、なぜか出発点に戻りました。私、何をしたんでしょうね?
目的地をセットし直します。花見の名所。これならナビもまちがえないでしょう。
早春の山は硬質の光に包まれて、無音。
冬の間は止まっていたのでしょうね。
目的地に着きました。
シーズンには渋滞もあるそうですが、誰もいないのでゆっくり鑑賞できました。
移動時間、ナビは20分と言ったけど、60分かかりました。ええ、迷子になりました。
運転の練習のためには適切な時間です。
無事にたどり着きましたよ
20分の道程ですし。信号2こしかありませんし。
その2こめで右折して、盛大にクラクション浴びましたけど。私、何をしたんでしょうね?
まあ、無事にたどり着きました。
無事にたどり着いたので、家を見て回ります。
空き家、を借りたわけですが、不動産屋の扱う物件ではないので、いろんなものが残っています。洗濯機や冷蔵庫などの家財は取り払われていますが、台所に調味料が置いてあったり、壁に時刻表やカレンダーが貼ってあったり、押し入れにアルバムが積んであったり。
調味料は捨てました。壁に貼ってある物は触らずにおきます。アルバムは湿気のない場所に立てて置きました。
この家の持ち主は一人暮らしでした。一人で住むには広すぎる家で、ずっと一人暮らしでした。1年前に倒れて、車椅子の生活になりました。古い家にはバリアフリーの配慮がありません。一人暮らしができなくなって、近くの施設に入りました。後を預かったのはご兄弟で、家をリフォームして売却するか、更地にして売却するかを検討中です。
持ち主の人はたまに自分の家を見に来るそうです。中には入れないので、外から眺めて帰るそうです。
私は庭を手入れしようと思います。立ち枯れた紫陽花は「じゃまなら切ってもいいよ」と言われたけど、春になれば葉がつきますよ。持ち主の人が好きな花かもしれません。手入れの仕方はネットで調べます。それか、誰かに聞きます。教えてくれる人がたくさんいそうです。
なんてことを、濡れ縁に座って、お茶を飲みながら考えました。今日は少し暖かいです。
車が届きました
長距離を陸送してくれた夫には、沸かしたてのお湯でカップ麺を振るまいます。
彼はこの後東京に戻ります。家をお借りした方に挨拶して、すぐにとんぼ返り。忙しい人ですね。
父も今日帰るので、一緒に実家まで行ってもらいます。
私の車、明るい中で見るときれいな色ですよ。夜に買ったんで判りませんでした。
忙しい夫から、3分で引き渡し説明を受けます。
車検証はここ。スペアキーがないので作ること。サイドブレーキは足で操作。シフトレバーはワイパーの後ろ。
了解、です。
エンジンを始動します。サイドブレーキは足で操作、シフトレバーはワイパーの後ろ、で、発進。
向かうのはガソリンスタンド。給油のしかたを教わります。
停めるのはここ。給油口はここ。こっちの機械にお金を入れて、おつりはあっちの機械から。
次からは一人で、はい、やります。
ここで、夫が降車。後ろについている父の車に乗り換えます。
スタンドを出て、しばらく2台で併走します。すごく良い天気。雪を被った成層火山がきれいに見えます。やがて交差点に差し掛かって、隣の車は、
ぱん、
軽くクラクションを鳴らして、曲がっていきました。私は直進。ここからは一人です。
橋を渡って、左に折れて、川に沿って走ります。傾き始めた太陽が水面にきらきら映ります。
初めて乗る車で、何度か通った道を、これから住む家へ。
無事にたどり着けるでしょうか?
歴代が通う湯治場
仕事の面接を終えて戻ると、家の様子が変わっていました。
不思議な事がおきていました。
窓にカーテンが吊ってあります。居間に炬燵が作ってあります。炬燵の上にお茶の道具とおにぎりが並んでいます。
台所にふきん。洗面所にタオル。トイレにトイレットペーパー。
玄関にはポストと表札。表札はガムテープとマジックインキのですけど。
この魔法を使った人たちは、疲れて炬燵で寝ています。
疲れますよ、これは。
私はといえば、鼻水が止まりません。鼻水を流しながら面接を受けたので、落ちたときの言い訳は万全です。
お風呂に入たいと思いました。
ボイラーを修理してお湯が出るようになったけど、お風呂は沸かせません。修理代をケチったからです。
お風呂に入りたいと思います。
3人がそれぞれ、近くのお風呂を検索します。WindowsとAndroidとiOSが同じ答えを出しました。
町中のスーパー銭湯まで15分。山間の湯治場まで15分。
「うちの人たちは歴代、この湯治場に通ってきた」年長者の発言で、行き先決定。今から3代で行って歴代度を更新します。
良い景色です。
温泉には地下のマグマを熱源とするもの(火山性温泉)や、高温岩体を熱源とするもの(非火山性温泉)や、よくわからない熱源のものがあります。
古くからある温泉は「山の動物が傷を癒やしているのを猟師が見つけた」的な、自然に湧き出たものがほとんどです。
が、地球の深部は熱いので、地下水には温度勾配というものがあり、だいたい100m掘れば3 ℃上がる勘定で、近くに山があろうがなかろうが、深く掘れば、そこに地下水があれば、温泉が出ます。近年のボーリング技術の進歩と共に、あちこちに温泉が出現しました。
が、私のものさしでは、渓流のそばにあるのが正しい温泉です。理由は、渓流が好きだからです。
ひなびた温泉です。玄関を入ると、「裏の畑で採れた」的な芋や菜っ葉が並べてあります。タオルの貸出無料、信用金庫の名前が入っています。93番地の家を建てた人が通ったここは、火山性の自噴泉。みつけたのは農夫で、傷を癒やしていたのは雉だそうです。
ところで、入湯料300円。に驚いたのは私だけで、同行の地元民によると、「この辺の温泉はそんなもん」だそうです。
これは毎日通ってしまいそうですね。鼻水もぴたり止まりました。
正しい温泉につかって疲れを癒やして、姪は帰って行きました。仕事休んで来ちゃったんですよ、この子。またいらっしゃい、温泉おごるから。
父はもう一晩泊まります。
あれやこれやが決まったので
急いで車を手配します。ネットで中古車を探します。
軽乗用車、オートマ、ナビ搭載、車検あり、が検索条件。
これを予算20万円で。予算は諸経費込の引渡し価格です。
今回は軽トラは見送りました。自分の家が建つまではヤギも飼えません。
車幅・車長の小さい車が扱いやすいので、軽自動車。すぐに迷子になるのでナビ搭載。高速道路は乗りません、etcは要りません。メーカー、車種は問いません。違いが判りません。
ありました。2004年式、軽トールワゴン。走行距離9.9万キロ。オートマ、ワンセグナビ搭載、車検2年を付けて17.5万円。買いました。
軽自動車って車庫証明いらないんですね。手続き簡単。ナンバーは使用地でも東京でも、好きな方を選べます。
保険も加入しました。対人対物賠償無制限。車両保険はつけません。免責額が車両価格を上回る車両保険って、意味ないでしょ?
これを、借りた家まで運びます。夫に運んでもらいます。よろしくね。
私は一足先に現地入り。就職活動に挑みます。
農業を開始しても、当座は収入は見込めません。支出はたくさん見込めます。
私の書いた営農計画書によると、野菜1,000㎡、果樹4,000㎡、を作ることになっています。
1,000㎡はすぐに耕せる土だけど、4,000㎡が問題です。一時転用で公共事業に貸していた土地で、しっかり整地されています。返すときに整地してもらっちゃったんです。雑草が生えなくて助かったけど、雑草も生えない土では果樹も育ちません。トラクターも入らないので、まずは油圧ショベルを入れます。土木工事です。
それから土質を調査して、たぶん土壌改良が必要になって、苗を買って、植えて、マルチを張って、ネットも張ることになるでしょう。たくさんお金がかかります。仕事、探さないとね。
新幹線を降り立つと、駅に車が来ていました。「たまたま近くに用があったので」、落ち合うことにした父の車には、敷布団が3枚積んでありました。それと、鍋やら、食器やら、掃除機やら。
車はもう1台来ています。「じいちゃん一人じゃ心配で」付いてきた姪。の車には、掛け布団が3枚積んでありました。それと、ストーブやら、カーテンやら、食料やら。食料の一部は調理済みです。大量のおにぎり、と煮物。こんな大量のおにぎりをつくった人は、今頃疲れて炬燵で寝ているはずです。今度肩もみに行くからね。