農業委員会と相談する
農業委員会は市区町村に設置される行政委員会です。農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導など、農地に関する事務を執行します。
農業委員会には、農業委員の人と農業委員会事務局の人がいます。
農業委員は特別職の公務員(非常勤)で、農業に識見のある人が任命されます。だいたいが認定農業者で、地区ごとに担当が決まっています。
農業委員会事務局の人は自治体の職員です。「去年は市民課で住民票を発行してました」とかの、普通の公務員の人です。
これまで、営農に関する相談は農業委員に、法的・事務的な相談は農業委員会事務局に、お願いしてきましたが。
農地転用の手続きで困りました。
相談する相手によって、言われることが違うんです。
たいそう困った挙句、「誰に相談するか」を相談することにしました。
ミッション1 農業委員に相談する
難しい案件です。私がヘマをしないよう、お目付け役を手配します。
「東京は暑いでしょ。避暑に来ませんか?」
甘言を弄して夫を招聘。
週末、菓子折を持って委員のお宅を訪問します。
「おくつろぎのところ失礼します」
結果、農転の手続きに関しては全て、事務局に相談することになりました。
「事務局のYさんを訪ねなさい。こっちからも話をしておきます」
「ありがとうございます。おじゃましました」
で、ミッション1コンプリート。
この後、夫は畑でドローンを飛ばしたり、その辺をドライブしたり、温泉に浸かったり、の夏休みを過ごして、猛暑の東京に帰って行きました。
ああそう、草刈りも手伝ってくれました。仕事(私は夏休みじゃなかったので)の帰りに畑に寄ったら、100坪くらいが刈られていました。
刈払機使ってみたかったんですよね。おもしろかったでしょ?
またいらっしゃい。草はいっぱいありますから。
ミッション2 農業委員会事務局に相談する
週明け。私の夏休み。農業委員会事務局に行きます。
相談案件は2つ。ひとつめは、
農地取得の際に申請した作物を変えてもいいですか?
草刈りをしてる時、考えました。
手に入らない用土を探すのをやめて、この土でできることをやる。そして少しづつ、この土を育てていく。ことができればと。
営農計画書にはブルーベリーを作ると書きました。
ブルーベリーは手のかからない作物で、素人にも作れると思えたからです。
確かに、普通の野菜、他の果樹よりは手がかかりません。植え付けてしまえば。
その、植え付けができないでいます。
ブルーベリーは酸性の用土を好みます。一般的な畑の用土は弱アルカリ性です。
ブルーベリーは針葉樹の端材でよく育ちます。一般的な作物は針葉樹を嫌います。
この、ブルーベリーの用土に苦労しているのですが、一般の畑の用土なら入手は簡単です。
その辺の誰かに頼めば、来週にでもダンプカーで運んでもらえます。
自分で作ることもできます。
今畑にある草、刈り倒して放置してある草を、放っておくと分解します。分解したら土に鋤き込みます。通気性と水捌けの良い土になります。
そこに何かの種を蒔きます。手のかからない作物、素人にも作れる作物、ついでにコストもかからない作物。なんて都合のいいもの。
いえ、きっとあります。目的は耕地を荒らさないこと、そして土を作ること。食べ物である必要はないし、売り物にする必要もありません。
何を撒くかはこれから考えます。
という相談。
もうひとつは、
どうしたら耕作証明をもらえますか?いつ?
私は耕作証明がほしいんです。
さて、市役所。
「Yさんはおいででしょうか?」
ご不在でした。だいじょうぶ。翌日も空けてありますから、私。
窓口の職員さんに相談内容を伝え、資料を預け、答えはいただかず、
「また明日まいります」
こういうところは周到です。
私は粗忽な人間ですが、何度も通って覚えた道なら走れます。役所に相談するのはもう、すごく慣れていますから。
翌日。再び市役所。
Yさん、どんな方でしょう?怖い人じゃないといいけど。
「○○町の農地の件で伺いました。Yさんはおいでになりますか?」
いらっしゃいました。昨日の方とお二人で、窓口に出てくださいました。
さて、案件①
農地取得の際に申請した作物を変えてもいいですか?
「変えてもいいですよ。何を作るかでお悩みなら、市の農林部で相談にのります」
あっさり。
お隣の方がしっかり伝えてくれていたんですね。ありがとうございます。
で、案件②
どうしたら耕作証明をもらえますか?いつ?
農業委員の方は「秋以降、今年の収穫が終わってから。年明けくらいをめどに」と仰っていましたが。
「めど」じゃ不安です。本当に出るんですか?どうしたら?
カウンターに公図を広げます。
115-1(3,058㎡)、115-5(1,273㎡)、100-1(949㎡)、
この3筆で、私は何をすればいいですか?
Yさん、マーカーで公図をなぞりながら、
「115-1は5月に耕起したんですね?」
はい。しました。
「8月に草刈りをした?」
しました。夫が少し、姪が少し、手伝ってくれました。
マーカーがくるりと丸を描きます。ひとつ。
「115-5は荒れていませんね?」
一部分だけ耕作してあります。芋畑の人がじゃがいもを作ってくれています。
残りはきれいな草地です。お弁当持ってピクニックしたくなるような草地です。
雑貨屋のご夫妻が今も手入れをしてくれているんです。
マーカーがくるりと丸を描きます。ふたつ。
「100-1は作物が植えてある?」
夏野菜が育っています。ご近所の方が作ってくれています。半分だけ。
「残りの半分は?雑草は生えていませんか?」
昨日、刈りました。
マーカーがくるりと丸を描きます。みっつ。
「では、お出ししましょう」
えっ?
申請書をいただきました。耕作証明書の申請書。返せとか言われないうちにしまいます。
「それでは、家を建てる手続きを始めていいんですか?」
「どうぞ、始めてください」
信じられますか?ミッション2コンプリートです。
雨があがりました。道が拓けました。