家を建てようと思いました
ここは宅地です。
上水も下水もありません。家はあります。
周りのまじめな宅地に謝ります。
ここは農地です。
上は田、イネ科の植物が育っています。
右は昔は花畑でした。
下は畑、資材置場ではありません。
ここに車を置いた人、早くどけてくださいね。
ここは山林です。
池のほとりにあるのがスギ林。池、見えませんけど。
小高い丘は雑木林になっています。
あと、崖があって、竹藪があります。
それから藪と、藪と、藪があります。
この辺のどこかに、家を建てようと思いました。
ヤギ
年をとったら田舎に住んで、ヤギを飼おうと思っていました。
ヤギはこんな生き物です。
おかしいでしょう。
おかしいでしょう。
年をとったので、田舎に住んで、ヤギを飼おうと思います。
おかしいから飼うわけじゃないです。
おかしいから飼うんですけど。
えっと、
管理が滞った農地や林野を再び利用するには,多くの困難が伴い課題が多い.
一方,農林地や耕作放棄地における管理手法の一つとして反芻動物の放牧(伊藤,2006)が行われており,
ウシ,メンヨウまたはヤギが利用されている(千田・小山, 2002;阿久津ら,2003;中西,2005;小山,2006;徳田・ 戸苅,2008).
ヤギはウシに比べ小型で扱い易く,急傾斜に強く,野草,潅木に対する嗜好性も良い(的場ら, 2003).
と、山形大学紀要(農学)第16巻 第4号に書いてありますよ。
これはヤギ、飼わなくちゃいけませんね。
絶壁を手配するのは難しいけど、登れれば何でもいいようです。
この辺で、どうでしょうかね?
2008年、竹に花が咲きました
古い写真を見ながら、時間について考えます。
写真の時から今までの間に、得たもの、つかみ損ねたもの。
この先得るもの、手放すもの。
について考えます。
未来なんて、持て余していた昔がありました。
持っているだけ、ろくな担保もない債権なんて持て余すしかない。
と、若い私は思っていました。
持ってないよりまし。
と、年取った私は言いますね。
まだ、つくれる未来はあるかな。
と、聞いてみます。年取った自分に。
持て余すほどの未来はないので、
とりあえず2年後とか。
ケヤキ(昭和生まれ)
ケヤキの落葉は盛大です。毎日焚き火で芋が焼けるほど。
自分の庭に積もる分にはいいのですが、風で流れて遠くまで飛びます。
隣家の屋根に積もった様子が、航空写真にも写っています。
雨樋が詰まれば家屋を痛めるし、排水路が溢れれば敷地が浸水します。
切ることにしました。
高齢になって、面倒をみきれなくなった所有者の決心です。
材を使ってくださるという方に、引き取ってもらうことになりました。
長年、木と生活してきた方です。
伐採から搬出、その後の用途も全てお任せしましたが、
材の乾燥に10年ほどかかるそうなので、頑張って面倒をみていただきたいと思います。
この方も高齢ですので。
さて、
あちこちに何本かずつ寄り添って立っています。
なぜこんなふうに寄り添っているのでしょう?
気になったので調べてみました。
これがケヤキの果実、葉の元につきます。
熟すと枝ごと木を離れ、葉を羽に、風に乗るそうです。
寄り添っているのは、きっと同じ枝の出身ですね。
明治生まれのケヤキの子ども達、ですね。
来年は私が焚き火で芋を焼くとしましよう。
ケヤキ(明治生まれ)
古い家の庭にケヤキの大木がありました。
明治時代の生まれです。
誰が植えたわけでなく、いつのまにか生えて育っていたようです。
3本ありました。
今はありません。
この木、私も目にしているはずですが、記憶にありません。
写真もありません。枝先の写った2枚しか。
50年前の写真です。
「昔はドローンがなかったので」ケヤキに登って撮ったそうです。
枝の向こうに麓の町が見えます。
麓の町からも、この木が見えたそうです。
汽車を降り、あたりを見回して、
ケヤキの大木を目印に、歩いてここまで来れたそうです。
小一時間ほどかかったはずです。
今はありません。
伐採前の写真です。
黄色い矢印がケヤキ、青い矢印が家の場所です。
伐採時。
3本の木を切り出すために、ずいぶん土地をいじりました。
まあ、
2年後にはこうなるんですけど。
ここ、上の写真の矢印の場所ですよ。
3本のケヤキは、近くの山に住む杣師に引き取られていきました。
いくつかの夏と、いくつかの冬を、杣師の山で横になって過ごした後、
柱や机や箪笥になるでしょう。
ここに立っていたときよりも、もしかしたら長い時間、
大事に使われる柱や机や箪笥になるといいです。
2016夏 周辺
裏手の池が容積を増やしていました。
ウシガエルが上陸する際、斜面の土を削るとか。
昔は魚も捕れた池ですが、今はカエルしか釣れません。何しろ、
ダブル認定の特定外来生物です。
各地で生態系への影響が報告されていますが、地形に与える影響は初耳です。
麓の田は池に変わっていました。
これはカエルではなく、人の手によるもの。
周辺の農家の灌漑に役立っています。
が、
誰かが魚を放流し、「立入禁止」の札を立てていました。
誰が誰に断って立てた札でしょう?
所有者は「何がいるのかな?」
釣りに関心があるようですが。
森のあいまに畑があります。
人目を避けて秘密の作物を栽培するのに適した場所です。
なぜか車が置いてあります。
実は車はたくさんあります。
軒にも,
庭にも、
通路にも、
置いた方とは先日話をしました。
「代わりに駐車場をお貸ししますので、そちらを使ってください」
裏の田は湿地になっていました。
イネ科の植物がいちめんに生えています。
イネじゃなくてごめんなさい。
でも、悪くない風景です。
立て札はないし。
車もないし。
以前、このあたりにも家がありました。
今は痕跡もないので、どうやら土に還ったようです。
その田(登記上)の畦に7本のクヌギがありました。
切られていました。
盗伐?
いえ、切った木は放置されています。
これは昆虫採集の跡。
樹液採集や灯火採集なんてまだるっこしい、
欲しいものを手に入れるには立木を倒すのが有効、
って、
思いついた人がいたようです。
実行したようです。
来年、ここは牧草地になります。
チェーンソーで昆虫採集をする人は、
ヤギに突かれたり、アヒルに噛まれたり、
堆肥の穴に落ちる危険があるので気をつけて。
穴は深く掘るつもりです。
2016夏 93番地
道は緩い上り坂、その家の玄関で行き止まりになっています。
50年前の写真です。
寄棟屋根の一部を切り落とした兜造に、小さな瓦屋根が寄り添っています。
屋根裏に蚕部屋をもつ養蚕農家。
玄関の前に手押しポンプ、廊下の外に手水鉢、風呂には山の水を引いていました。
扉を開けたところは土間で、居間には囲炉裏が切ってあります。
廊下の内側は障子、外側は板戸。母屋にガラスはありません。
50年前、ここに老女が住んでいました。
ヤギを飼って暮らしていました。
8年前の写真です。
手押しポンプは電動ポンプに替わっています。
そして動きを止めています。
住む人はなく、訪れる人もめったにありません。
道は花びらに埋まっていました。
久しぶりに行ってみました。
道がなくなっていました。
家はありました。
夏草の匂いに包まれていました。
とてもいい匂い。
草は地面と、屋根に生えています。
築106年、木造草葺平屋建(登記上)。
これ、放っておいていいんですか?
所有者は「壊すのも手間だし、そのうち土に還る」
行政の指導が入りそうなことを言います。
私の父です、すみません。