一人暮らしをしたことがありますか?
学生時代、親から生活費貰って好き勝手一人暮らししてました。
の、一人暮らしとは、いろいろ違いますね。やっぱり。
面倒事がいっぱいあります。
面倒なのは主に、私の粗忽のせいです。
車を運転すれば迷子になるし、バスに乗れば迷子になるし。
片道8kmの通勤に、どうしたらこんな苦労ができるのでしょう。
不思議です。
全部自分のせいなので、誰にも文句を言わなくてすむのがいいです。
どうやら、私は文句を言うことに倦んでいたようです。
実家では文句をたくさん言っていました。
だって、夜飲み残したお茶が凍るんですよ、茶碗の中で。
実家の人は飲み残したお茶を放って寝たりしないので、この現象に遭遇するのは私だけです。
それから、水槽の中で緋鮒が凍るんですよ、廊下で。
カチカチに凍っているので、陽が昇ったら庭に埋めるつもりで置いておいたら、陽が昇ったらピタピタ跳ねて生き返りました。
こんな家ですから、たくさん文句を言ってきました。
この家も寒いです。
東京でもたくさん文句を言ってきました。
エアコンの設定温度が高すぎる、低すぎる、テレビの音がうるさい。ゴミがたまる。
この家にはエアコンがありません。テレビがありません。ゴミがいっぱいたまっています。
ゴミの捨て方が判らないです。プラスチックは週1回、資源は2週に1回、燃えないゴミは月1回、ですって。難しいでしょ?
ここの自治体は良い焼却炉を持っているようです。ということは判りました。よかった。
誰かに文句を言わずに過ごす一日は、つやつやとしたきれいな一日です。たまっていくのが嬉しいです。
そう、私は、文句を言うことに倦んでいたんです。
今日もつやつやとした良い日でした。
ああ、犬には文句を言いました。
この犬、一足ごとについて歩くんです。そしてこうなります。
「下りられないなら、上るな」
2017 春
引っ越しの朝、トイレが詰まりました。
私は7時に起きました。夫は6時から奮闘していました。
ごめんね、修理用の道具あるんだけど、教えてなかったね。
15年で2回めの配管トラブル。で、出発が遅れて、到着も遅れました。
借りた家についた時、暗がりの中で水仙がほころびかけていました。
それから後は、いろいろありました。
いろいろあって、何を書いたらいいのか判らない。
昨日はとても良い日でした。車をぶつけましたが。
今日はとても良い日でした。頭痛がひどいけど。
水仙が満開になりました。
引越荷物はおおかた片付きました。
ごみ捨てはすごく大変そう。いっぱいためて置いてあります。寒いから腐らない。家が広いからじゃまにならない。
4月1日の採用枠、の初出勤は4月5日。昨日から出勤しています。大切に勤めたいと思います。
犬は私の山を気に入ったようです。
最後の箱
明日朝、レンタカー借りて、積み込み次第出発します。
今日のうちに駐車場に荷物下ろしておきました。このマンション、エレベータないんです。第一種住専の低層マンションです。
半年前からだらだら荷造りしてきましたが、今最後の箱をつくっています。
ここに入れるのは、パソコンと、犬の食器と、転職の書類。雇用保険証書とか、年金手帳とか。それと、お風呂上がりに洗面所から持ち出してきた雑多なもの。
数日前、懐かしい人から連絡がありました。何やら、夢に私が出てきたとか。
この人と連絡を取るのは3年ぶり。高校時代からの、とても長い付き合いの友人です。
近く引っ越しますと返したら、びっくりされました。
今日は近所の友人に会いました。犬の散歩をしていて、家の前でばったりと。
この人に会うのは2年ぶり。15年来の付き合いです。
明日引っ越すと言ったら、「聞いてない」怒られました。
携帯番号もメールアドレスも変えてないし、これまでどおりで連絡つくし、挨拶とか忘れてましたよ。
でも、この人たち、普段は連絡取らないんですよね。何かの岐路に立ったとき、すごく頼ってきた人たちです。
不思議な感じがしました。
普段は連絡取らない人と、近況のややこしいこと全部とばして、するする話が通じてしまうのが不思議。
そういえば二人とも、あれやこれやのみっちり詰まった時間を、一緒に過ごした人でした。
引っ越す前に「引っ越します」伝えられてよかったです。
ということを、考えながら、最後の箱をつくっています。
まるでとりとめのない箱です。
仕事が決まりました
鼻水を流しながら受けた面接は不採用、でしたが、
その前にもう一つ受けていました。3週間前です。
「結果はすぐにお知らせします」と聞いていました。
結果、昨日お知らせいただきました。4月1日の採用枠です。
こういうフェイントが来るとは思いませんから、雇用保険とか、健康保険とか、あれこれ調べていましたよ。
お知らせが来て嬉しいです。
勤務地、なかなかアーバンなところです。銀行も、デパートも、映画館も至近。
そして私は、自分の生活ビジョンの瑕疵に気が付きました。
先日、借りた家で炬燵にあたっていたら、庭先から声を掛けられました。初めて会う方です。
「財布を拾ったんだけど、この家の人のものじゃないですか?」
「違いますね。交番に届けられてはどうでしょう?」
「交番は麓の町まで行かないと、、」
で、なぜか私が警察に電話して、財布の中身を改めて、持ち主の勤務先がわかったので、勤務先に連絡しました。財布は拾った方にお持ちいただきましたが、後刻、落とし主が引き取りに来て、うちにもお礼を言いにきました。
こういう所に住むわけだから、パンプスとか、スーツとか、必要ないよね。という気になっていました。うっかり、里山の雰囲気にのまれていました。
が、職場がアーバンじゃなくたって、パンプスくらい必要です。冠婚葬祭とかありますし。引越荷物、見直しました。
引越荷物です。
石です。
クロゼットの中身たくさん残したまま、石を梱包していました。
理由があるんです。説明させてください。
これは大学の研究室で働いていたとき、研究代表の先生にいただいた石です。
海外に地質調査に行かれる先生に、「おみやげは何がいい?」と聞かれ、私は「石」と答えました。
頭にあったのはこういうのです。
いただいたのが上の石です。
花崗岩です。花崗岩は大陸地殻を構成する比較的軽い岩石です。軽いので、海洋地殻の上に乗って大陸地殻をつくっています。
が、この石はずっしりと重量があります。金属の脈が入っているんです。
熱水性鉱床の研究を専門とされる先生は、ジャングルの何処かでこの石をみつけ、「よいものをみつけた。うちのお手伝いさんが喜ぶだろう」と、お持ち帰りになりました。
航空機の超過手荷物料金を払われたので、安くない石です。
もう一つ、石です。
手前右が水晶で、左の星型は白雲母。きれいでしょ?
もう一つ。
これは方解石。割るのが楽しい石です。
こういうものを、楽しく梱包していました。
布団と鍋釜食器、掃除機、ストーブは支援物資が届いてますし、
冷蔵庫、洗濯機、電子レンジは持っていったらこの家の人が困るので、
運ぶのは、石と、着替えと、本と、パソコン、くらいです。それと、犬。
借りた家に連れていくのはどうかなと、何日か悩みましたが、思い切ってお願いしました。
「どうぞ、気にしないで」と言っていただきました。
最後にもう一つ、大事なもの。
ハンノキの種。持っていきます。
春はまだちょっと先
さて、
カーテンを吊って、温泉を開拓して、車を運んで、庭を眺めて、引っ越し終了。
ではないです。夕方には東京に戻ります。荷造り全然してません。仕事の契約が残っています。退職日は3月31日です。引っ越しは4月1日です。忙しいです。
忙しい私が、今から何をするかというと、その辺をうろうろします。土地勘をつかむためと、運転技能の向上のためです。
行き先をナビと相談します。湯治場のそばに渓流がありました。その水源を見たいです。
つづら折り。道の高さに、手を伸ばせば届く距離に、民家の屋根があります。
というルートを案内されて、なぜか出発点に戻りました。私、何をしたんでしょうね?
目的地をセットし直します。花見の名所。これならナビもまちがえないでしょう。
早春の山は硬質の光に包まれて、無音。
冬の間は止まっていたのでしょうね。
目的地に着きました。
シーズンには渋滞もあるそうですが、誰もいないのでゆっくり鑑賞できました。
移動時間、ナビは20分と言ったけど、60分かかりました。ええ、迷子になりました。
運転の練習のためには適切な時間です。
無事にたどり着きましたよ
20分の道程ですし。信号2こしかありませんし。
その2こめで右折して、盛大にクラクション浴びましたけど。私、何をしたんでしょうね?
まあ、無事にたどり着きました。
無事にたどり着いたので、家を見て回ります。
空き家、を借りたわけですが、不動産屋の扱う物件ではないので、いろんなものが残っています。洗濯機や冷蔵庫などの家財は取り払われていますが、台所に調味料が置いてあったり、壁に時刻表やカレンダーが貼ってあったり、押し入れにアルバムが積んであったり。
調味料は捨てました。壁に貼ってある物は触らずにおきます。アルバムは湿気のない場所に立てて置きました。
この家の持ち主は一人暮らしでした。一人で住むには広すぎる家で、ずっと一人暮らしでした。1年前に倒れて、車椅子の生活になりました。古い家にはバリアフリーの配慮がありません。一人暮らしができなくなって、近くの施設に入りました。後を預かったのはご兄弟で、家をリフォームして売却するか、更地にして売却するかを検討中です。
持ち主の人はたまに自分の家を見に来るそうです。中には入れないので、外から眺めて帰るそうです。
私は庭を手入れしようと思います。立ち枯れた紫陽花は「じゃまなら切ってもいいよ」と言われたけど、春になれば葉がつきますよ。持ち主の人が好きな花かもしれません。手入れの仕方はネットで調べます。それか、誰かに聞きます。教えてくれる人がたくさんいそうです。
なんてことを、濡れ縁に座って、お茶を飲みながら考えました。今日は少し暖かいです。
車が届きました
長距離を陸送してくれた夫には、沸かしたてのお湯でカップ麺を振るまいます。
彼はこの後東京に戻ります。家をお借りした方に挨拶して、すぐにとんぼ返り。忙しい人ですね。
父も今日帰るので、一緒に実家まで行ってもらいます。
私の車、明るい中で見るときれいな色ですよ。夜に買ったんで判りませんでした。
忙しい夫から、3分で引き渡し説明を受けます。
車検証はここ。スペアキーがないので作ること。サイドブレーキは足で操作。シフトレバーはワイパーの後ろ。
了解、です。
エンジンを始動します。サイドブレーキは足で操作、シフトレバーはワイパーの後ろ、で、発進。
向かうのはガソリンスタンド。給油のしかたを教わります。
停めるのはここ。給油口はここ。こっちの機械にお金を入れて、おつりはあっちの機械から。
次からは一人で、はい、やります。
ここで、夫が降車。後ろについている父の車に乗り換えます。
スタンドを出て、しばらく2台で併走します。すごく良い天気。雪を被った成層火山がきれいに見えます。やがて交差点に差し掛かって、隣の車は、
ぱん、
軽くクラクションを鳴らして、曲がっていきました。私は直進。ここからは一人です。
橋を渡って、左に折れて、川に沿って走ります。傾き始めた太陽が水面にきらきら映ります。
初めて乗る車で、何度か通った道を、これから住む家へ。
無事にたどり着けるでしょうか?