廃屋のサクラ

いつの間に満開のヤマザクラ

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を、一所懸命見ています。

 

今週、夫と子どもが来るはずでした。

来れなくなりました。

私の大切な先生の奥様も来れなくなりました。

義妹も、友人も来れなくなりました。

この花を見るのは私だけ。

なので、一緒懸命見ています。

 

やけにひょろ長い木でしょ?

この辺ずっと竹藪で、日が当たらなかったので、どんどん背伸びしてしまったのです。

いえ、以前は花畑でした。

以前、ここで花をつくって、ヤギを飼って暮らしていた人がいました。

50年ほど前です。

その人が亡くなって、その後に住んだ人が亡くなって、見る者のない庭は竹藪に呑まれてしまったのでした。

それでも、この木は頑張っていたようです。

うんと背伸びしてますから。

 

高円の野辺の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに

 

という歌を思い出します。

季違い、木違い、ですが。

 

 

4年前、竹をたくさん切りました。

全部は切りません。私、竹は好きなの。

庭とか道とかにはみ出してた分、100坪くらいを切りました。

それから毎年、ちょっとずつ手を入れてきました。

そしたらね、去年はたくさん花が咲きました。

ヤマザクラ、ウワミズザクラ、タイサンボク、キンモクセイ

その1本1本が、私はとても嬉しくて。

 

今、私は一人でサクラを見ています。

9年前の日々を思い出しています。

9年前、私は東京にいて、ひどい災厄に見舞われたこの地方を心配していました。

離れて暮らす大事な人たちが大変な思いをしてるのに、自分にできることがなくて、歯ぎしりをしていました。

今、私はここにいて、満開のサクラを見ています。

一所懸命に見ています。